邪教 03


 あれから丸一日が経ち、私は北西の村ロキサへやって来た。ジュネスに頼まれた調査を終えたのが昨日の夜遅い時刻。寝る間も惜しんでローエン殿があらかじめ用意して下さっていた馬車に乗り込んで半日ほど揺られ、たった今到着したところだ。
 ロキサは、大昔にロクサーヌという大魔法使いが生まれ育った村だという。そのため、村の広場にはロクサーヌの銅像が建てられている。ジュネスとはそのロクサーヌ像の前で待ち合わせる予定だ。
 ……おや?
「カリム殿!」
 像の前にジュネスはおらず、ルーエン殿だけが居た。白銀の鎧は目立つからだろうか、白い布地の一般的な衣服に着替えている。
「お待たせしました、ルーエン殿。ジュネスはどうしました?」
「ジュネス殿はいち早く捜査に着手いただいております」
 ジュネスがそこまでやる気を出すとは予想外だった。それほど急を要するということなのだろう。あの男は、間に合うのであればギリギリまで行動しない。
「調査の結果はいかがでしたか? カリム殿」
 ジュネスに頼まれていた調査は、古代竜事件の時にお世話になったレウニオン卿に関してだった。
「レウニオン卿もまた凄腕の魔法使い二名を雇って本件の捜査しているようです。今回といい古代竜の件といい、立派な方です」
「ええ。ミライア様を亡くされたばかりだというのにお国のために…… ガンダルフ様は本当に素晴らしいお方です」
 ルーエン殿が沈痛な面持ちで頷いた。
「レウニオン卿とはお知り合いですか?」
「はい。ミッドガルド家はレウニオン家の傍流にあたりますので、昔からお世話になっています。ミライア様のことは彼女が小さな頃から存じ上げておりまして、亡くなられたと聞いた時は……」
 ミライア・レウニオン嬢が亡くなってまだひと月といったところだ。親類縁者にとってみれば悲しみを癒やすにはあまりに短い時間である。ルーエン殿が肩を震わせるのも道理と言える。
 彼でさえこのように悲しみの縁から立ち直り切れていないのだ。父親たるレウニオン卿の悲しみたるや想像を絶する。にもかかわらず、古代竜事件に続いてグラディアス国のために尽力されているとは……
 思わず、私も目頭が熱くなった。
「……さあ、カリム殿。参りましょう。ジュネス殿やガンダルフ様にばかり任せてはおけません」
「そうですね。まずは情報収集といきましょう」
 戦闘行為では役立たずな私ではあるが、今の段階でならば充分に役に立てる。ひょっとすれば、ジュネスよりも早くウヴジィム教団を見つけ出せるやもしれない。
 まずはお約束だが、酒場へ向かおうか。この村にも出版社繋がりの情報通な知り合いがいる。今の時間であれば飲んだくれているはずだ。
「――リオ。待ってろよ」
 リオ? ウヴジィム教団に捕らえられているという貴族の娘だろうか?
 ルーエン殿の表情を窺ってみるが、悲痛にも歪んでいる。彼にとって大切な方なのかもしれない。
 ……よし。微力ながら私も力を尽くそう。


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