第1話『星に選ばれし者』 01




 魔法などこの地球上には存在しない。そのことを俺が知ったのはいつのことだっただろう。
 幼稚園……ではあり得ない。あの頃の俺は、魔法がこの世に存在することを微塵も疑っていなかった。海外のファンタジー小説にはまり、親が呆れる程に読み耽っていた。更には、作中の魔法使いの真似をして魔法の修行なる行為に励んでいた。それで魔法の存在を疑っていたはずがない。
 ならば小学校か。常識的に考えて一番妥当と思われる時期だ。図体もでかくなったその折に、未だ魔法だ魔女だ悪魔だなどと騒いでいたのでは、苛めの標的にされかねない。いくら何でも世の理を理解し、つまらない一般市民へと変貌を遂げていたのではなかろうか。
 そう。小学生でも理解する。俺達が住まうこの星――地球には、魔法などという非科学的なものは存在しないのだ。翼も持たず自由に空を飛ぶ。杖をかざし炎や冷気を自在に操る。念じるだけで天変地異を引き起こす。そのような不可思議な現象を行使する存在はいない。魔法使いなど存在し得ない。
 今やそのことを心の底から信じるに至った俺は、グラビア雑誌を学校に持ち込み、授業中に読み耽る、ごくごく普通の男子高校生へと成長した。そして、休み時間には友人達と雑談を交わし、偶に可愛い女の子にちょっかいを出す。どこからどう見たとして、俺は健全な一般的男子高校生だ。正直、自信がある。……いや、自信が『あった』と言い換えるべきだろうか。
 というのも、俺は今、一般的の枠からはみ出してしまった。再び魔法の存在を夢想――いや、確信してしまった。一人の転校生の存在を契機として……
 話は昨日の朝までさかのぼる。彼女が転校してきた夏休み明け初日まで。



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